海外の葬送事情

イギリス-その3

イギリスの火葬

               骨シリーズ講演 第6回「骨と法律」薦田哲 より抜粋

 イギリスの火葬規則では、遺灰の処理は火葬申請者の責任とされますが、とくに遺灰の引取等を希望しなければ火葬責任者によって遺灰は埋葬または散灰されます。遺族などに遺骨・遺灰の引取義務はありません。引き取られない遺灰が多数で、まとめて散灰用の芝生に撒布されたり埋葬されたりするとのことです。遺族が持ち帰ることも少数ですがあるそうです。その場合、撒く場所の制限はとくにはないとのことでした。

 たとえば川の場合、流れがあればどこでもよくテムズ川でもいいとのことでした。当時、ロンドン市内のテムズ川は川幅があり水質も清浄とはいい難いので、散灰に違和感を持つ人はいないかもしれないと思いましたが、上流は川幅も狭く清流なので、そんな所ではやらないだろうと思っていました。ところが最近、BBCなどで話題になったのは、イギリス中部の美しい田園地帯に流れるソーア川という幅10メートルに満たない川での散骨です。観光用のボート会社がサービスをしていますが、ヒンズーやシーク教徒の人たちが大勢参加し、さまざまな供物を投げ込んだことが地元で問題になりました。個人が行う散骨は静かにおごそかに撒くのが一般ですので、とくに散骨を規制する動きはありません。

 最近話題になったもう一つ。国葬に使われたことのある船を使い、テムズ川やメドウェイ川で散骨するサービス事業を始めるという発表がありました。この船は1965年、チャーチル首相の棺を搬送したことでも著名なクルーザーです。由緒ある船が利用されるのは、それだけ散骨への支持が強いのでしょう。

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「再生」第64号(2007年3月)

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