自然葬と現代社会・論考など

「散骨」書きかえ「粉末状の遺骨」

1件の陳情、都議会がやっと採択

 築地市場の移転問題などを審議した10月7日の東京都議会本会議で、「都立霊園内に、粉末状の遺骨を埋蔵できる墓地を設けてほしい」という、2人の都民から出された陳情が採択された。「趣旨にそうよう努力されたい」という意見が付されている。今後、霊園を担当する建設局公園課で検討することになる。

 陳情を出したのは、かつて会の事務局長を務めたこともある都内北区在住の岩崎昭生さん(73)と、東久留米市で環境保全運動をすすめる渡部卓さん(76)。岩崎さんは現在会を離れているが、渡部さんは会員だ。大学時代以来の知り合いで、岩崎さんが始めた陳情活動に渡部さんが加わった。

 2人の陳情は、もともと「都立霊園内に、散骨庭園を設けてほしい」という内容だった。都は、1998年と2008年に、小平市の小平霊園に新形式の合葬埋蔵施設をつくったが、骨壷で収納するのですぐ限界がくる。粉末化して、霊園のしかるべき場所にまいてはどうか。遺骨を粉骨にして葬送することを抵抗なしに容認する社会的状況がすでに日本には出現しているのだから、というのが理由だ。

 2人は、これをもって数年来、都議会の各派の議員や都の建設局公園課などと話し合いを続け、理解を求めてきた。2007年に都が都公園審議会に「都立霊園における新たな墓所の供給と管理」について諮問した。すると、「なぜ、自然葬運動をしている葬送の自由をすすめる会の代表が加わっていないのか」とただしもした。

 熱心な活動は、都の担当者の間で知られるようになった。

 審議会が2008年に出した答申の中で、「自然に帰りたいという思いに答える新たな墓所の提案」として、遺骨を土に返すタイプの「樹林墓地」「樹木墓地」の都営霊園での設置を検討する必要があると打ち出し、都も昨年ごろから動き始めた。

 その頃、都や都議会の関係者から2人に「散骨庭園の表現は何とかならないか」と打診があったという。「散骨公園」を「粉末状の遺骨を埋蔵できる墓地」に書きかえてほしいという働きかけだった。

 「散骨」への都の根強い抵抗感を改めて実感したが、これを受け入れたことについて岩崎さんは「まず陳情を通したかった。散骨庭園を都営霊園につくる一歩になると思う」と話している。                     ◇

 「樹林墓地」などについては、朝日新聞が1月、都は2012年度にも都営墓地に導入の予定と報じた。会はこれにあわせ、まだ"墓地"から抜け出せない石原都政の霊園対策を批判して、「再生」76号に 「石原知事に6つの質問――鈴木都政より後ろ向き」 という記事を掲載している。 

                                  (小飯塚一也・記)

再生79号(2010.12)

logo
▲ top