会長室より   コラム

著名人が選んだ自然葬

          

                         安田 睦彦

墓埋法などから自然葬は違法と思われていた壁を破って、本会の第1回自然葬が行われたのは1991年10月5日。マスコミへの発表は、それから10日遅れて10月15日でした。国が追認したのを受け、それ以後、自然葬はマスコミにたびたび取りあげられるようになりました。

サンデー毎日の1991年11月17日号は、「あなたは死んだらどうしてほしいですか」と各界著名人10人ほどに緊急アンケートをし、その回答を特集して掲載しました。それによると8割近い方が自然葬を何らかの形で望んでいました。著名人の選び方にもよるので、それをもって当時の国民全体の意識とみるわけにはいきませんが、“自然葬元年”だっただけにその多さには私も驚きました。

著名人がどんな形で自然葬を望んだか、また自然葬を望みながら果たせなかったのか、現在での時点(2008年5月)で一部の著名人を選んで検証してみました。

◇かく願った

野垂れ死にが理想―作家 畑正憲(1935~)

墓をつくるのは、生き残った者の思いからでしょうが、私自身は何の意義も感じないんですよ。動物たちのお墓もない。それどころか野垂れ死にが理想。死体は人目につかない林で、腐っていってくれればいいな。
人の記憶にとどまらないほうが、うれしいね。強がりもあるけど、死後まで回りのものに悲しまれてはかなわん、という気がします。
土葬の中国は畑が一面、土饅頭。インドのガンジス川の下流なんか死体だらけです。でも汚いとか、イヤだとかは思わない。日本とは違う、異文化があるんだと妙に納得しちゃいました。ロマンチックでいいなと感じたのは、旅で訪れたスリランカ・ケガーラ地方で見た埋葬方法。
土葬した頭のところにヤシの実を植えるんです。芽を吹き、やがて大木になったヤシの木になった実を、皆で食べる。死体が栄養となり、豊かな果実を生む、あのやり方なら、私もお願いしたいですね。

花火で飛ばして「たまや!!」―落語家 立川談志(1936~)

オレが死んだときの葬式は、もうやり方が決まってるんだよ。戒名は立川雲黒斎家元勝手居士。お経は「きんぎょーェ、きんぎょー」って金魚売りの声でデキシーの音楽で送ってもらう。
だけど、骨については考えたことがなかったなあ。死んだ後に自分の骨をこうしてくれというのは、結局、この世に未練があるからだと思うね。オレは未練など無いから、あとのことは家族や弟子の意思に任せるよ。
火薬と混ぜて団子にして、花火で飛ばして「たまやー」なんてぇのもいいかもしれないね。まあ、一つ注文をつけるなら、落語の話しに沿ってやってもらいたい。
例えば「片棒」って話の中では息子がオヤジの骨を飛行機に乗せ、宙返りさせて「バンザーイ」てなことをする。オレだったら拍手しちゃうよ。あるいは「野ざらし」みたいに通りすがりの人が、骨に酒をかけてくれるってのもまた、いいかもねぇ。

墓の中で自己紹介なんて―漫画家 柴門ふみ(1957~)

とにかくお墓はヤダ。肉親とだったらいいけど、 理由 ( わけ ) わかんない、顔も見たことない嫁ぎ先の先祖と一緒のお墓なんてちょっとね……。墓の中で自己紹介はゴメンです。アメリカだと、同じ墓に入るのは二親等までという話。すごく合理的で憧れるなあ。
海に骨(遺灰)なんかまかれたら、魚を食べる気にならないと反対する人もいるみたいだけど、魚にカルシウムが増えていいんじゃない?好きな葬送をすればいいと思いますよ。でも、いざ、ヒマラヤの山中に埋めて、なんて頼まれたら、面倒くさいから、きっと「そのへんのお墓で我慢しろ」って生前に説得します。吉野川へ、というのなら考えてもいいな。実家(徳島)に近いから。ハハハ。結局、面倒くさくなければいいんですよ。

◇かく願ったが…。

飛行機からパーッと山野に―作家 松本清張(1903~93)

家族がイヤだと言えば、それに従いますが、本音としては山や川に撒いてもらいたいね。哲学にも、「自然に帰れ」というのがあるでしょう。いちばんいいのは、飛行機から山野にパーッと撒くこと。世界に目を転じれば、中国の周恩来、インドのネールだって散骨です。要は本人の意思次第ですよ。

(筆者の追記)その清張も、家族が「正式な遺言もしなかったし、まあ、世間並に……」と墓に入れてしまった。

悠久の流れに還すのが正しい―洋画家 岡本太郎(1911~1996)

僕にとっては自分が生きている、その瞬間々々がすべてなのであって、死んじゃったらもう知ったこっちゃない。勝手にしやがれです。散骨にしたい人はすればいい。自由でしょう。
ただし、万物は輪廻しているから、この世の生が終わったら悠久の流れに還してやることが正しい。だから残された肉体も、シンボリックに自然に還って行くほうがいいと思う。沖縄の古い風習で、海風で死体を風化させる「風葬」や、鳥に死体を突つかせるチベットの「鳥葬」というのは素晴らしい送り方です。
第一、ごてごてとお墓ばかりつくって、地球上、お墓だらけになっちゃったら楽しくないよ。

(筆者追記)親の岡本一平・かの子夫妻の墓がある多摩霊園に一緒に眠っている。


(2008.6)