「長沼町さわやか環境づくり条例」の廃止を求める請願
会は、この団体とは何の関係もありませんが、条例は憲法、墓埋法、地方自治体法に違反する疑いが濃厚として、町に条例を廃止する条例案を議会に提出することを求める請願法にもとづく請願をしました。
以下に、請願をめぐる長沼町と会のやり取りをまとめました。
- Q: 「長沼町さわやか環境づくり条例」の廃止を求める請願 (2005.4.28)
- A: 長沼町からの回答 (2005.5.24)
- Q: 改めて質問いたします (2005.6.28)
- A: 長沼町からの再度の回答 (2005.7.11)
- Q: 会が再々度の質問 (2005.8.8)
- A: 会の再々質問に対する長沼町の回答 (2005.8.25)
- Q: 散骨禁止条例について改めて質問 (2005.9.5)
- A: 散骨について回答 (2005.10.4)
- Q: 散骨禁止条例について質問 (2005.10.20)
- A: 質問状(2005年10月20日)についての回答 (2005.10.28)
- ルールと法律 【 解説 】
●長沼町に条例廃止を求める請願
2005年4月28日
板谷利雄・長沼町長殿
特定非営利活動法人葬送の自由をすすめる会 会長・安田睦彦
5月1日施行の「長沼町さわやか環境づくり条例」について、憲法16条(請願権)および請願法の規定にもとづき次のように請願いたします。
請願内容
「長沼町さわやか環境づくり条例」は第8条で「何人も墓地以外の場所で焼骨を散布してはならない」と規定し、基本的人権である「葬送の自由」を完全に否定しています。
「葬送の自由」は、まず憲法13条「個人の尊重、生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」にいう一般的自由権のひとつとして自己の死後の葬法を自分で決定する権利、つまり自己決定権と、また私的行動について他人の干渉を許さないプライバシー権などとかかわり、さらに憲法19条の「思想、良心の自由」、20条の「信教の自由」、21条の「表現の自由」とも深くつながる基本的人権です。
5月1日施行の「長沼町さわやか環境づくり条例」は、これら憲法で保障された国民の権利を侵す条例です。廃止するための条例案を速やかに議会に提出することを求めます。
請願の理由
私たち葬送の自由をすすめる会は、15年前に墓にしか入れないという「法と習俗」の壁を破り、理論的確信をもって遺骨(焼骨)を海、山に還す自然葬を行いました。これに対し、国もその正当性を追認し、わが国で初めて葬送の自由という基本的人権が確立しました。
この際、厚生省(現・厚生労働省)は「自然葬は墓埋法の対象外である。墓埋法は自然葬を禁ずるものではない」と、また法務省は「葬送のための祭祀で、節度をもって行われる限り遺骨遺棄罪などの規定に触れず問題はない」とそれぞれ見解を示しました。
これによって、葬送の自由と自然葬についての国内の社会的関心と合意が急速に広まりました。私たちの会はその後賛同者を増やし、現在、全国に12の支部を持ち、会員は1万1千人を数えています。自然葬は通算972回に及び、1657人(2005年4月25日現在)の方たちを海、山に還してきました。自然葬という葬送方法は長い実績の積み重ねの上に国内でもすでに慣習法化しています。
条例は、散骨場所を提供した業者に6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金を科しているほか、散骨者にも勧告や命令を出し、従わない場合には住所氏名の公表や2万円以下の罰金または拘留若しくは科料に処せられる、といった罰則もついています。たとえば、町民が故人の遺言で自宅裏の持ち山にある桜の木の根っこにひとつまみの遺灰をまこうとしたらどうでしょうか。町の制止勧告、命令を無視すればたちまち条例違反で2万円以下の罰金など処罰を受けることになります。
明らかに法務省、厚労省のさきの見解にも反し、自然葬15年の実績に裏付けられた「葬送の自由」を否定するものです。そもそも自然葬・散骨自体を規制する科学的根拠も公共の必要性もありません。同様に散布場所の提供を業とする者に対する規制についても合理性がありません。そのうえ罰則をもって規制することは規制対象が不明確であり、また、著しく比例原則に違反していると言わざるを得ません。したがって、この条例は憲法、墓埋法、地方自治法に違反しております。
条例はまた、遺骨(焼骨)の散布を犬、猫のふんなどと同列に並べて禁止しています。これは人間の尊厳を冒すものであり、葬送のための行為として節度をもって自然葬を行った故人や遺族、この運動への社会的合意を広げようと努力しているわれわれの会と会員を貶めるものです。
「長沼町さわやか環境づくり条例」の速やかな廃止を求める理由は以上の通りです。
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長沼町からの回答
平成17年5月24日
特定非営利活動法人葬送の自由をすすめる会
会長 安田睦彦様
長沼町長 板谷利雄
「長沼町さわやか環境づくり条例」の廃止を求める請願について
平成17年4月28日付請願に対する本町の考え方について、次のとおり回答します。
本町の住民は「焼骨の撒布によって影響を被る」ことから、本町は「地方公共団体は住民の福祉を図ることを基本とする」という地方自治法の規定に基づき、地域に暮らす住民の福祉を維持し、増進するという本来的な責務を果たすべく、地方自治の本旨にのっとり、この条例を制定したものです。
以上、ご理解を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
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改めて質問いたします
――「散骨禁止条例」廃止を求める請願関連――
長沼町長・板谷利雄様
2005年6月28日
NPO法人葬送の自由をすすめる会・安田睦彦会長
4月28日付で板谷町長あてに提出した「長沼町さわやか環境づくり条例」の廃止を求める請願書に対する長沼町の5月24日付の回答は、まったく回答になっていません。本会が指摘したように、「長沼町さわやか環境づくり条例」は、葬送の自由という基本的人権を否定するもので、憲法違反、墓埋法違反であるとした点などに何も答えていないからです。
本会は、問題となったNPO関連事業体をかばう気持ちはありません。しかし、憲法違反、墓埋法違反の条例は速やかに廃止されなければならないと考えます。
改めて以下の点に絞って質問いたします。それぞれ、7月15日までに明確に答えていただきたい。
1、焼骨散布の禁止について
(第8条 何人も、墓地以外の場所で焼骨を散布してはならない)
-
質問(1) 本条は、墓地以外の場所で焼骨の散布を禁止しておりますが、どのような合理的根拠があるのでしょうか。
-
質問(2) 墓地への焼骨の散布を認める趣旨でしょうか。当該事項は墓地経営許可権との関係等から墓埋法に抵触しないのでしょうか。
2、散骨場所の提供に対する罰則について
(第13条 焼骨を散布する場所を提供することを業とした者は、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する)
-
質問(1) 本条の罰則規定は、墓埋法が禁止していない墓地経営以外の行為について、刑罰(しかも同一)を課することは墓埋法と抵触しないのでしょうか。
-
質問(2) 「場所の提供」という曖昧な概念は罪刑法定主義に違反しないのでしょうか。
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長沼町からの再度の回答
NPO法人葬送の自由をすすめる会 平成17年7月11日
会長 安田睦彦様
長沼町長 板谷利雄
質問状(2005年6月28日)について(回答)
平成17年6月28付けでご質問のあったこのことについて、次のとおり回答致します。
記
1、焼骨散布の禁止について
-
(1)質問(1)関係
「住民の福祉を維持し、増進する」という地方自治の本来的な責務に基づくものであります。
-
(2)質問(2)関係
墓地経営の許可を受けている墓地内での散布の許諾は、墓地の管理者の範疇であります。なお、本町の条例は、墓埋法上規定のない焼骨の散布についての規制を定めたものであり、墓埋法との抵触関係の問題は発生致しません。
2、散骨場所の提供に対する罰則について
-
(1)質問(1)関係
1の(2)の質問で回答しましたように、墓埋法上規定のない行為であるので抵触の問題は発生致しません。
- (2)質問(2)関係
法令においてもこのような表現の例はあり(売春防止法第11条(場所の提供)第2項等参照)、罪刑法定主義に反するものではありません。
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会が再々度の質問
2005年8月8日
長沼町長 板谷利雄様
NPO法人葬送の自由をすすめる会 会長 安田睦彦
■「散骨禁止条例」について再質問します
1 焼骨散布の禁止(条例8条)
- 質問(1) 条例8条の具体的な立法事実は何でしょうか。
貴町は、焼骨散布の合理的根拠について、「『住民の福祉を維持し、増進』という地方自治の本来的な責務に基づくもの」であると回答されました。
しかし、焼骨の散布は、国民が行う葬送行為の一類型として、基本的人権の発現であり、多数決で奪うことができないものです。焼骨の散布を禁止する条例は合理的根拠がない限り人権侵害の疑いがあります。この合理的根拠は、「住民の福祉」といった抽象的な内容では足りず、当該規制を正当化できる具体的な立法事実が必要です。
-
質問(2) 墓地内での散布しか認めない本条例は墓埋法に抵触しないのですか。また、憲法上、許容される合理的な制限といえますか。
貴町は、墓地内での散布の許諾は墓地管理者の範疇でありますと回答されましたが、疑問です。しかし、本条は、その目的は住民の福祉といって公共の福祉と異ならず、まさに墓埋法と同一目的であり、墓埋法が禁止していない行為についてこれを禁止しようとしているのですから、同法に抵触すると言わざるを得ません。また、墓埋法上、墓地には埋蔵または埋葬以外の葬送方法は予定されていないのですから、墓地内に焼骨を散布することを認める点、墓地許可・監督権限のない町が墓地を散骨場所とする点において、必要な限度を超えて憲法上の基本的人権を制限するものとして違憲の疑いが強いと考えます。
2 散骨場所の提供に対する罰則(条例13条)
- 質問(1) 前記1(2)で述べたとおり、墓埋法に抵触しているのではありませんか。
- 質問(2) 散骨場所の提供を禁止し、かつ、重罰をもって規制することは罪刑法定主義に反しないのですか。
貴町の回答では、売春防止法等の例を挙げておりますが、同法は昭和31年に売春行為が風俗を乱す反社会性が顕著であることから制定されたものです。他方、本条例は一般的に問題のない焼骨の散布を対象としており、その場所の提供に対して、6か月以下の懲役等の重罰をもって規制するのは罪刑法定主義にもとるものと考えます。
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会の再々質問に対する長沼町の回答
平成17年8月25日
NPO法人葬送の自由をすすめる会
会長 安田睦彦様
長沼町長 板谷利雄
質問状(2005年8月8日)について(回答)
平成17年8月8日付で送付のありました再質問につきましては、平成17年5月24日長住第130号及び平成17年7月11日長住第231号をもって回答したとおりであります。
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散骨禁止条例について改めて質問
2005年9月5日
長沼町長 板谷利雄様
NPO法人葬送の自由をすすめる会 会長・安田睦彦
当会は、貴町の「長沼町さわやか環境づくり条例」に対して、本年4月28日に廃止を求める請願をし、それに対する回答をいただいて以降、2度にわたって質問をしてきました。しかし、貴町の一連の回答は、「すべての焼骨の散布を禁止する条例は合理的な根拠がない限り人権侵害の疑いがあります」という本会の質問の主旨にまともに答えていません。改めて次の1点について質問します。
条例8条は、墓地以外の場所で焼骨の散布を禁止していますが、どのような合理的根拠があるのでしょうか。墓地内に焼骨を埋めようと、撒こうと、「地下水など周辺環境を汚染し、農作物の風評被害を招く」という?苦情?が出るのではないでしょうか。
9月20日までにご回答いただければ幸いです。
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散骨について回答(平成17年10月4日)
NPO法人葬送の自由をすすめる会
会長 安田睦彦様
長沼町長 板谷利雄
本件については、以前から回答しているとおりであります。
長沼町は、散骨という葬法の全てを否定しているものではなく、あくまでも長沼町の区域内における、墓地以外の場所での焼骨の散布行為を禁止しているものでありますのでご了知願います。
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散骨禁止条例について質問(2005年10月20日)
長沼町長 板谷利雄様
NPO法人葬送の自由をすすめる会会長・安田睦彦
「長沼町さわやか環境づくり条例」では、焼骨を「人の遺体を火葬した遺骨(その形状が顆粒状のものを含む)という」と定義しています。「顆粒状のもの」とは、粒状のものを指していて、粉末化した灰状のものは含まれない、と解してよいのでしょうか。
当会では、10月27日、東京弁護士会館で「墓埋法と自然葬――葬送の自由を守れ」シンポジウムを開催します。条例も議論の対象となると思われますので、上記1点だけ確認したいと思います。
10月26日までに回答いただけると幸いです。 以上
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質問状(2005年10月20日)についての回答
平成17年10月28日
NPO法人葬送の自由をすすめる会会長 安田睦彦様
長沼町長 板谷利雄
2005年10月20日付で質問のありました件につきましては、死体を火葬した結果生じる遺骨の全てを指すものであります。
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ルールと法律 【 解説 】
人間社会には生活をするためのルール、礼儀、作法などの社会規範があります。人間としての条理、習慣にもとづくものもあります。法律は社会規範のひとつですが、特殊なもので権力による強制力を持っています。現在の市民社会では法律による規制は最小限でなければならないというのが常識です。
長沼町の"散骨禁止条例"は強制力を持った法律です。町内で起きた一つ一つのトラブルは対立した両者の話し合いや調停者、助言者もまじえてのルールづくりで解決できますし、そうすべきです。
葬送の自由は、現在の多様化した価値観や宗教感情を互いに尊重するところにあります。一方的な立場から、相手の立場を全否定するような場合に、往々にして紛争が生まれます。
本会の自然葬に反対の方がいるのは当然です。科学的根拠がなくても感情的な反発というものはあります。それを配慮して本会は自主ルールをつくっています。
例えば、海では、遺灰の粉末化、海岸でなく沖に、養魚場、養殖場を避ける、水溶性の紙に遺灰を包む、セロハンでまいた花束を禁じ、花びらだけにする―など。
山(再生の森)では、山林全体を使い、こまぎれ分譲しない、遺灰を粉末化する、人家、施設から離れる、飲み水の水源地を避ける、庭の場合は隣家との話し合い―など。
市民運動として自然葬に道を拓いた本会に続いて散骨ビジネスも広がりました。業者も節度あるルールという点では、ほぼ本会の自主ルールを踏襲しています。
こうしたルールに沿って、自然葬に賛成、反対の双方の話し合いが行われ、譲るところは譲って折れ合うのが民主的な解決方法でしょう。どうしても決着しない場合は裁判に持ち込まれることもあります。
ルールは即法律づくりと短絡的に早合点するのは禁物です。長沼町の散骨禁止条例は、トラブルをめぐって有効な話し合いもなく基本的人権である「葬送の自由」をいきなり否定するものです。包丁は家庭で自由に使える道具ですが、時に人を殺す凶器にもなります。危険だからといって包丁の使用を法律で規制して家庭で使えなくするのは愚です。
「葬送の自由」を条例で規制するような愚を犯してはなりません。 (M)
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