規制の背景に「葬送の自由」欠いた論議
条例や部内の要綱などによって散骨規制を行っている自治体は、報道 などで明らかになっているだけで2009年2月現在、別表の通りです。営利を目的とした事業者がいわゆる「散骨場」を計画したり、住民とトラブルになったりしたのが発端というケースがほとんどで、周辺自治体の動きをみて予防的に規制に動いた北海道・七飯町のような例もあります。いずれも、「葬送の自由」の議論を深めないまま、ともかく問題処理をと過剰反応しているようにもみえ、残念です。
「再生」では、これまでも規制問題が表面化するたびに報告してきましたが、別表のうち、問題が起きて条例などの新設に至ったのが長沼町、岩見沢市と七飯町など北海道の3件、既存の条例の一部改正で動いたのが諏訪市と今回の秩父市です。また、規制の違いを見ると、長沼町、秩父市などが散骨を「環境条例」の対象にとらえているのに対し、諏訪市や岩見沢市は「墓地等の経営の許可条例」の問題でとらえて、「散骨場」の事業者の運営に一定の規制をかけています。これまでの例から、手法はこの2つに大別されるようです。
環境条例を適用した長沼町や秩父市が、「墓地以外の場所での焼骨の散布」を禁じる強権的な対応となっているのに対し、諏訪市や岩見沢市は、「散骨自体を規制することは基本的人権に抵触するおそれがある」という前提に立って、事業者に細かい規制をかけるという違いがあります。
秩父市の環境保全条例の改正の要点は、ごみの投棄禁止を規定した第7章の冒頭に、新たに「何人も、墓地以外の場所で焼骨を散布してはならない。ただし、市長が別に定める場合は、この限りでない」という条項をつけ加えた点です。「何人も、墓地以外の場所で焼骨を散布してはならない」と大上段に構えた表現は、長沼町の条例の第8条と同文で、遺骨の散布を犬、猫のふんなどと同列に並べている点もそっくりです。秩父市は先例を参考にした気配が濃厚です。
火葬後の遺灰は明らかに衛生無害の物質ですが、環境条例による規制がそれを犬、猫のふんのように扱って、事実上の散骨全面禁止に結びつけてしまうところが不思議です。
これらの動きに合わせ、散骨について議論する自治体も少なくないようです。例えば、北海道の新十津川町議会では、岩見沢市の条例が施行されたあと、「(同町でも)農業の風評被害に至る可能性も懸念される」という質問が出され、町側は「(長沼町の条例は)散骨という新しい葬送の方法をどう受け止めるかをめぐる過渡的な対立を顕在化させたものと考える。環境条例がいいか単独の法制化がいいかなど含めて今後検討したい」などと答えています。また、埼玉県・三芳町では「墓地等の経営の許可等に関する条例」について町民の意見を募集した中に、散骨について「認めるとすればどのように限定するか至急検討する必要がある」という意見がよせられました。町は、「墓埋法は散骨を想定しておらず、国も『節度をもって行われる限り規制しない』との立場です。現段階では、条例による是認、あるいは規制をすることは考えていません」と回答しています。
これらの論議は、慎重な対応の例といえるかも知れません。しかしまだ、「葬送の自由」についての正面からの議論がすすめられているところはあまりないようです。秩父市の場合は、11月に問題が起き、12月には条例を改正、即日施行となりました。厳しい禁止規定を設けながら罰則規定は間に合わず、町は「これから検討する」などと述べているところをみても、バタバタと制定を急いだのは明らかのようです。七飯町の 「要綱」は、議会で論議もしていない、法に根拠がおかれていない部内の文書に過ぎません。それによって事実上、散骨禁止に近い規制が行われています。
長沼町の条例などを検討するため、05年10月に葬送の自由をすすめる会が東京・霞ヶ関の弁護士会館で開いたシンポジウムでは、憲法学者から自由な散骨を頭から否定した条例の違憲性は濃厚という判断が示されました。その中で、こうした規制がバラバラに出てくる背景には、自然葬は墓埋法には触れないとしながらも、遺灰をまいた上に土や落ち葉をかけただけでも「焼骨の埋蔵」に当たり違法、などと同法に固執する厚労省のかたくなな姿勢があります。
昨年夏、業者の「散骨施設」計画が住民とのトラブルに発展した静岡県御殿場市では、すでに「散骨場の経営の許可に関する条例」について議会との協議も行われています。佐藤正・環境課長は「厚労省は、地域によって習慣も事情も違うとして具体的問題への対応は自治体の裁量にゆだねているが、自治体によって見解が異なるのはよくない。一律に規定があればあえて条例の必要はないと思う。御殿場市の場合、業者には2回警告したが工事をとめなかった。強行されなければここまですすめる必要はなかった」と話しています。
一方で、同市議会は国に「『散骨場』の設置に係る法規制」を求める意見書を送りました。これは規制強化を求める主張ですが、地域からも問題に対処できない墓埋法の矛盾が指摘された形です。
時代に合わなくなった墓埋法を廃して、遺灰を自然に還すもよし、墓に入れるもよし、葬送の自由を原則とする葬送基本法の制定によって、こうした“条例騒ぎ”も解決するのではないでしょうか。この機会に、「葬送の自由」について視野の広い議論が行われるよう望みたいと思います。
(事務局=小飯塚一也・記)
報道などで明らかになっている自治体の散骨規制(2009年2月現在)
●長沼町さわやか環境づくり条例
―北海道・長沼町(2005年5月1日施行)
●七飯町の葬法に関する要綱
―北海道・七飯町(2006年4月1日施行)
●諏訪市墓地等の経営の許可等に関する条例
―長野県・諏訪市(2000年4月1日施行の条例を一部改正し、散骨場経営に関する規定を加えて2006年4月1日施行)
●岩見沢市における散骨の適正化に関する条例
―北海道・岩見沢市(2007年9月18日施行)
●秩父市環境保全条例
―埼玉県・秩父市(2005年4月1日施行の条例を一部改正し、墓地以外の散骨禁止条項を加えて2008年12月18日施行)
