葬送基本法への道、運動のなかでの位置づけ みなさんからの質問に答えて
会長・安田睦彦
集会などで皆さんからよく出る質問にこたえながら、気がついたことがある。
葬送基本法制定をめざすたたかいについて、会員のなかにちょっととまどいがあるのではないか。このたたかいについてこれまでの運動のなかでの位置づけが、十分に理解されていないためではあるまいか。私の説明不足に原因があるように感じた。
本会のこれまで20年の運動を一貫しているキーワードは、「葬送の自由」と「自然葬」である。この運動の流れのなかで、葬送基本法制定をめざすたたかいを位置づけると、次のように要約できると考える。
1 本会の出発は、国によって奪われていた国民の基本的権利である「葬送の自由」と「自然葬」を取り戻すたたかいであった。
2 運動がひとまず定着したいま、国民主権に基づく市民立法・議員立法で、「葬送の自由」と「自然葬」を国に積極的に推進させるたたかいである。
3 葬送基本法制定への道は、日本の民主化につながるたたかいである。
会員から出るおもな質問を取り上げると――
A いま自然葬がやれているのに“寝た子を起こす”必要はないのでは?
厚労省は「自然葬は墓埋法の対象外だから問題ありません」と公認しながら、そのまま“寝込んで”しまった。墓埋法が時代遅れになっているのに“寝た子”を決め込んでいるのが厚労省である。
古い葬送習俗と高い葬儀費、山と緑を破壊する墓地造成、核家族、少子高齢化で墓の守り手がない……こうした社会背景が自然葬を後押ししているが、裏返せば墓地埋葬等に関する法律――遺体・遺骨をどう葬るかを規制する――がこうした問題に対応できなくなっていることを明確に示している。多様な価値観、多様な葬法の登場に厚労省は寝ている場合ではないのだ。自然に還るもよし、墓に入るもよし、葬送の自由を公平に保障する葬送基本法の制定を急ぐときである。
B 自然葬は「黙認」されているということか?
これも上の「寝た子を起こすな」に通じる質問である。「黙認」というのは違法を前提としている。スピード違反の車を見逃して「黙認」するというように。1991年10月に本会が実施した自然葬に対して、国は「墓埋法の対象外であり、節度をもって祭祀の1つとしてやれば問題ない」とはっきり認めている。
C 全国で数市町村が散骨禁止条例とか散骨場規制条例など作っているが、厚労省が背後にいる?
憲法違反の疑いが強い散骨禁止条例を作った長沼町(北海道)のケースを見ると―――
厚労省健康局生活衛生課長が2004年10月22日付文書「樹木葬森林公園に対する墓地埋葬等に関する法律の適用について」で北海道環境生活部長からの質問に以下のように回答している。
「墓地等の経営及び管理に関する指導監督については、地方自治法上の自治事務とされており、具体的事案に関する判断については、許可権者の裁量にゆだねられておりますが、一般的に言えば、地面に穴を掘り、その穴の中に焼骨をまいた上で、1.その上に樹木の苗木を植える方法により焼骨を埋めること、または、2.その上から土や落ち葉等をかける方法により焼骨を埋めることは、墓地埋葬等に関する法律(昭和23年法律第48号)第4条にいう「焼骨の埋蔵」に該当するものと解されます」
さらに、マスコミの自然葬についての取材にたいして次のような説明(要約)もしている。
「地表にまいた遺灰(遺骨)の上に土や木の葉をかぶせても墓埋法の埋蔵にあたります」
墓埋法の前身は1884年(明治17年)にできた墓地及埋葬取締規則だ。自葬(神官、僧侶に依頼しない葬儀)を禁止していた明治政府は、信仰の自由を求める内外からの声に押されて解禁に追い込まれたが、引き換えに、墓地以外に遺体、遺骨(焼骨)を埋葬、埋蔵するのを禁じたのが同規則だった。
厚労省は「自然葬は墓埋法の対象外」としながら、ときに“先祖がえり”して上述のような珍妙な「埋蔵」解釈を流して世論をけん制したりする。
厚労省が国民の多様化した価値観や宗教感情に背を向けて墓一辺倒の墓埋法に固執するのはなぜか。墓園関係団体などへの天下りや、特定の業者の利益を守っているのではないか、と勘繰りたくもなる。
D 議員立法もなかなか難しいようですが……
憲法にうたわれた国民主権を実現する主要な方法としては、市民の目線でつくった市民立法を国会で議員立法によって成立させることである。しかし現実に国会が制定している法律の圧倒的多数は議員立法ではなく、行政官僚によって準備され、内閣によって提案されたものである。
友好団体である日本尊厳死協会が尊厳死法案を署名運動からスタートして30年余りかかってなお議員立法にまで持ち込めないでいることをみても、その難しさが分かる。
しかし、立法全体のなかで行政立法が増え、議員立法が少ない現状は、国民主権に反する。いろいろの制約をはずして個々の議員の法律案提出権を認めるなど、国民主権にふさわしい国会にする必要がある。国会の活性化は日本の民主化につながるたたかいである。
E 自然葬・散骨の法規制、ルール作りを盛り込んだ厚労省の「これからの墓地等のあり方を考える懇談会」報告書(1998年)に本会は反対していたが?
本会がスタートして7年、その報告書が出た。本会はこれに抗議、反対した。反対の要点は、
1.国民に墓に入るという画一的な葬法を押しつけて「葬送の自由」を奪ってきた明治以来の墓地行政への反省がない。
2.自然葬の広がりを恐れた厚労省の天下り理事長をいただく墓園業界団体などが既得権益を守ろうといている。
3.墓地開発による自然環境の破壊についてまったくふれていない
――などをあげた。
本会の立場としては運動もまだ少年期、自然葬の節度については神経質なほど注意していた。この段階で自然葬・散骨の法規制は、不当に自然葬の芽をつんでしまうという恐れもあった。いずれにしても、上からの法規制でなく、下からの市民立法を考えていた。
業者、宗教法人、地方自治体、民間団体、市民運動団体、そして一般個人の方たちへ――日本の葬送のあり方をまじめに考えているすべての人が、葬送基本法の制定に向けて結集するよう訴える。
(2009年度会員総会での会長あいさつから)
