厚労省のおかしな対応
長沼町問題に関連して厚労省のおかしな対応も明らかになりました。- 必要だった国、道庁の適切な助言
- 撒いた遺灰に土や木の葉かけても違法?拡大解釈する厚労省
事業者と住民の利害調整はかるため
必要だった国、道庁の適切な助言
長沼町で「散骨」をめぐって騒ぎが起きたのは2003年秋。札幌市のNPO法人「22世紀北輝行研究会」の向井隆会長が社長をつとめる有限会社「北輝行」の「ホロナイ樹木葬森林公園」事業計画が地元紙に報道されたことに始まります。
■樹木葬公園、当初は墓地を計画
その事業内容は、同法人の役員が町内に所有する約2万3000平方メートルの山林を森林公園として開発、うち1万3000平方メートルを樹木葬の用地にあ て、1区画4平方メートルずつに区切り、1区画につき永代使用料52万5000円、年間管理費1万2600円で区画内に散骨してもらうというものです。販売区画総数は800から1000区画を予定していました。
同法人の話では、はじめ岩手県一関市の寺院が始めた墓地に穴を掘って 焼骨を埋め、その上に石塔かわりの樹を植える樹木葬方式をまねて樹木葬墓地公園を計画、料金などもほぼ同じにして長沼町に申請したが認められなかったそう です。そこで2004年3月から散骨方式で遺灰を樹下にまく樹木葬に切りかえて事業に踏み切りました。これまでに1件の利用者があり、契約者も20人 いるといっています。
この事業計画が公表されたとたんに地元住民から反対の声が一斉に上がりました。町内の有権者の7割が反対 署名をしました。幌内地区は酪農、稲作、畑作農業地区で、「地下水に遺灰がまじると気持ち悪い」「家畜の飲み水が心配」「農作物への風評被害がこわい」な どが理由になっています。
こうした声にこたえて長沼町議会は2004年6月10日、「ホロナイ樹木葬森林公園設置に反対する決議」を行い、国や道庁などにも訴えました。
有限会社「北輝行」の事業内容は、NPO法人がリードしているというにしては、山林をこまかく区切って高く売るなど墓地業者顔負けの営利主義(事業主は費 用の一部を公園建設にあてるというが)がめだつようです。これでは事業を始める際のうたい文句、「森を守り、自然を豊かに維持する」ことにはほど遠いので はないかと思われます。
本会の自然葬は、山や海に遺灰を還す伝統的葬法を守るとともに自然環境保全をめざしています。「再生の森」での自然葬も周辺との関係に配慮し、広い森の自然に手を加えたりせず、山林全体を使うもよし、そのなかの1本、あるいは数本の木の根っ子にまいてもよ い、という方法をとっています。費用はほとんどが実費で、3万円から10数万円ほどしかかかりません。参考までにいえば、会の自然葬は海が8割、山(再生の森)が2割となっています。
■必要だった十分な対話と調整
一方、反対する長沼町の地元住民の声は、科学的な裏づけにとぼしい感情的な理由がめだつように思いますが、といって根拠のない風評被害が起きないとは限りません。
厚労省と北海道庁は事業主と長沼町、町議会、反対住民とのトラブルについて相談を受けていたようです。その際、散骨方式については「穴を掘って遺骨(焼骨)を埋め、その上に樹を植える」ことがなければ「自然葬、散骨は墓埋法の対象外」という従来の見解に照らして問題はないとしています。
葬送の自由という基本的権利もその行使には、公共の福祉による制限と、各人、各団体の自由が互いにぶつかる場合、調整に関する内在的制約は避けられません。いかなる権利も、その行使には節度ある方法で行われなければならないのは、当然の社会的制約です。
それらを踏まえたうえで、長沼町の場合、「何人も墓地以外の場所で焼骨を散布してはならない」というような葬送の自由を否定する条例を認めるだけの「公共の福祉」があると言うことができるのでしょうか。厚労省と道庁は地方自治法にもとづく適切な「助言」「勧告」をしたのでしょうか。
国、道庁は双方の利害対立を対話と調整で解決する道をさぐるべきで、憲法違反の条例制定を避けるよう「助言」「勧告」すべきであったと思います。
違憲の条例を放置した国、道庁の責任は重大であると考えます。
撒いた遺灰に土や木の葉かけても違法?
「焼骨」の「埋蔵」と拡大解釈する厚労省
厚労省健康局生活衛生課長が昨年(2004年)10月22日付文書「樹木葬森林公園に対する墓地埋葬等に関する法律の適用について」で北海道環境生活部長からの質問に以下のように回答しています。
「墓地等の経営及び管理に関する指導監督については、地方自治法上の自治事務とされており、具体的事案に関する判断については、許可権者の裁量にゆだねられておりますが、一般的に言えば、地面に穴を掘り、その穴の中に焼骨をまいた上で、その上に樹木の苗木を植える方法により焼骨を埋めること、または、その上から土や落ち葉等をかける方法により焼骨を埋めることは、墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年法律第48号)第4条にいう「焼骨の埋蔵」に該当するものと解されます」
さらに、あるマスコミの自然葬についての取材にたいしてつぎのような説明(要約)もしています。
「地表にまいた遺灰(焼骨)の上に土や木の葉をかぶせても埋蔵に当たる」
厚労省はこれまで「自然葬は墓埋法の対象外」と明言しています。しかし、同省幹部OBが全日本墓園協会の役員に天下りしているせいでもないでしょうが、自然葬という新しい葬送形態を墓による旧い葬送形態の変種の一つとみなしているようです。自然葬は海か山などの自然に遺灰を還して大きな自然の循環の中に還ることを願うもので、古代からの伝統的葬法を生かすとともに墓地造成による環境破壊を防ぐことをめざしています。旧来の墓による葬送形態とはまったく次元の違う葬送形態です。
厚労省は墓埋法の「埋葬」の定義「死体を地中に葬ること」、つまり土葬を拡大解釈して「焼骨の埋蔵」にまで広げているのです。
しかし、法律の解釈として死体の「埋葬」と焼骨の「埋蔵」とを混同することは許されません。
「埋葬」については、墓埋法5条1項で、行政の許可を得て行うことと定められているのに対して、「埋蔵」についてはそのような規定はありません。墓埋法は公衆衛生上の必要からできたもので、無害の焼骨は規制する必要はなく、墓に入れようが、家に保管しようが、まこうが、葬送としての節度をもってすれば本来自由なはずです。5条1項では、「火葬」には行政の許可を求めていますが、火葬後の「焼骨」の扱いには、行政の許可を求めていません。実際に、埋葬・火葬許可証は発行されますが、埋蔵許可証は発行されません。
厚労省は「焼骨」を「埋蔵」する場所は「墓地としての墳墓」と解釈し、その延長線上に「穴を掘って土や落ち葉をかぶせる行為」を埋蔵とみなして禁止しているのでしょう。さらにそれを拡大延長して「地表にまいた遺灰(焼骨)の上に土や木の葉をかぶせても埋蔵に当たる」などという珍妙な解釈にまで発展したのでしょう。
本会の「再生の森」での自然葬は、周辺との関係に配慮し、広い森の自然にあまり手を加えたりせず、山林全体を使ってもよいし、その中の1本あるいは数本の木の根っ子に粉末状にした遺灰をまいています。まいた遺灰の上に水をまいても土をかけることはありません。本会はスタート当初から慎重の上にも慎重を期してきました。変ないいがかりをつけられ足をひっぱられないようにしてきたのです。
自然葬について、地面に穴を掘って焼骨を埋めるのは埋蔵に当たるから墓埋法違反と言うにとどまらず、地面に焼骨をまいて土をかけたり、木の葉を置くだけでも埋蔵に当たるから墓埋法違反などというのはおかしな解釈です。
あるマスコミの論説委員は、「無害の焼骨だから穴を掘ろうが、土をかけようが実際には何の問題もない。むしろ遺灰をむき出しにしておくより土をかぶせた方がよいのに……同じことをしても樹木葬は墓地だから許されるというのも変な話だ。長沼町散骨禁止条例に従って墓地で焼骨をまいても、地下水が汚れて風評被害を招くという住民からの苦情が来るのは同じではないか」と首をかしげています。

