(update_20070701_ed)

葬儀ネットについて

万一のとき 簡素にしたい方に

  自然葬をしたいと思う「葬送の自由をすすめる会」の会員は、葬儀をする人から葬儀をしないで遺体を荼毘に付すだけの人までさまざまです。遺体の運搬まで遺族がする場合は別ですが、葬儀業界の商戦が過熱するなかで、自然葬に理解があり、簡素な葬儀を安心して頼める業者を探すのが難しいという会員の声が少なく ありません。

 会には「病院から遺体だけ自宅や火葬場に運びたいが、どうしたらよいか」「業者ペースでない簡素な葬儀にしたい」「葬儀はしないで荼毘に付すだけにしたいけれども、引き受ける業者が見つからない」と いった悩みや相談を寄せる会員の声が少なからずあります。そのような場合、会では『葬儀ネット』を紹介しています。

「葬儀ネット」はこのような会員の要求をかなえるために吉沢さんが中心になってつくった組織で、会員に誠実な葬儀業者を紹介することを目的としています。現在、ネットに加盟しているのは以下の通りです。万一のとき、必要ならば担当者に連絡してください。

「ネット事務局」
『木霊と凪』(担当者・吉沢)
東京都豊島区東池袋1-47-1   03-3983-9079


(20040901_ss54p38_ed)

私は遺言執行人

葬儀ネット代表・吉澤武虎さんに聞く

 

簡素で合理的な葬儀を求める声が最近の自然葬相談会でふえている。そんな願いを実現しようというのが「木霊と凪」をはじめとする葬儀ネットだ。ネットを主宰 する吉澤さんは、身寄りのない独り暮らしの高齢者の遺言執行人という、あまり世間では知られることのない仕事も引き受けている。いったい、どんな役割なの か、吉澤さんにインタビューした。

■任意後見人としての立場

_ 遺言執行人とは、物々しい感じがしますが、どういう仕事ですか。

吉澤  「葬送の自由をすすめる会」の会員で、会と自然葬の生前契約を結んでいる方のなかで、まったく身寄りがない人がいます。そういう方から相談を受けて、遺族の代わりをするだけでなく、亡くなった時の処置から住居の整理など、さまざまな後始末をお引き受けします。その内容を遺言に書いて、私と契約を結んで執行人に指定してもらうわけです。ですから、亡くなられて、遺灰が自然葬にされる時には、私が遺族代わりに立ち会います。

― これまで何人の方の遺言を執行したんですか。それと、今は何人らいの遺言を引き受けていらっしゃる?

吉澤  5人の方の遺言を実行しました。皆、独り暮らしの女性の方でした。それと、まだ亡くなってはおられませんが、10人以上の方の遺言を実行するように依頼されています。

皆さん全員が、葬送の自由をすすめる会の会員です。

 遺言でどんなことの実行を依頼されるのですか。現在引き受けている具体的なケースで教えてください。何を引き受けて、それには費用がどのくらいかかりますか。

吉澤  50代の男性のAさんの場合、この方は病弱で独り暮らしなんですが、亡くなった時の処置から始まって、借りている住居の整理と家主への返還、自然葬の立ち会いなどを含めて80万円で契約しています。これは会の自然葬契約の予納金とは別の費用です。

 私は任意後見人という立場で、故人の遺言を執行することになります。亡くなられたら、病院から遺体を引き取って荼毘に付します。身寄りがいませんから、葬儀をしてくれという方はほとんどいません。遺骨を粉末化して、最後は自然葬の立ち会いをします。

  生活保護を受けている60代のBさん(男性)のケースですと、もし亡くなられたら市役所から死亡通知がくることになっています。自治体が火葬までやってくれるので、私は遺骨の粉末化と保管、自然葬の立ち会いをします。この方は会と自然葬契約を結び、すでに予納金を納めていますが、生活保護という特殊な状況 ですので、私の方の費用は6万円でお引き受けしました。

 献体登録をしている方の例ですと、亡くなると大学が遺体を取りにきます。実習が終わると遺骨になって帰ってくる。その遺骨を粉末化して、自然葬で遺族の役を務める。それと仏壇を処分する。これら全部を9万6,000円で契約しています。

 

■責任の重さを自覚

 身寄りがない、天涯孤独という方ばかりなのですか。

吉澤  皆さん、ご自分ではそうおっしゃいますが、亡くなられると結果的には誰か血縁の人が必ず出てきます。完全に天涯孤独という例はまだぶつかったことがありません。ただ、自分は天涯孤独だと思って生きている人は沢山います。ある女性は生前は全く独りだと言っていましたが、亡くなる直前になって、前の夫と の間の娘さんが出てきました。

 血縁者がいても、長年にわたって行き来がないから、自分は独りだとおっしゃる人もいます。たとえ、いたにしても迷惑をかけたくないから、独りぽっちだと言う人もいる。これは人間の優しさなんでしょうぇ。たしかに、たった1人の肉親の姉が80歳で北海道にいるというような場合は、頼るわけにもいかないし、天涯孤独と同じことでしょう。

 遺言の執行を頼む側にしても、相当な信頼感がないと、死ぬまで安心して頼ることはできないのではありませんか。

吉澤  契約を結ぶまでに何回か話し合って、私の人物評価をしてもらうわけですが、弁護士でもない私を信用して契約を結び、前払いでお金を預ける。そこまで信頼してもらえるかと思うと、身の引き締まる思いです。責任をもってやらなければならないと、常々痛感しています。

 依頼者の生活にかなり立ち入ることもあるわけですね。

吉澤  ええ。病院に入院する身元保証人になったこともあります。身内や親しい友人がいないと、いざ入院という時に保証人になってくれる人もいない。遺言執行の契約を結んでいたので、私が保証人になりました。公団住宅に入居する保証人になったこともあります。その方は最後は公団を出て、年金があるので老人ホームに入りましたが。

 頼まれれば、何でも引き受ける?

吉澤  こちらも相手の方を評価させてもらうことがあります。責任を取りきれない保証人になることはできない。これまで1人だけお断りしたことがあります。 アルコール依存症の人で、住宅公団の保証人になってくれという依頼でした。断るというか、保留中といったところですかねぇ。

 

■葬式をしたくない

 自然葬の相談会でもよく出る質問ですが、病院で亡くなったら葬儀をしないで、そのまま荼毘に付したいという希望が多いです。どうすればいいですか。

吉澤  遺言で私を指定した方が病院で亡くなると、看護婦が私に連絡をくれますから、車を手配して遺体を迎えに行きます。意地が悪い病院だと30分以内に来い、霊安室には置けないというところもあります。これは病院の出入りの葬儀業者にやらせたいからです。一般的には2時間から5時間以内に遺体を引き取って、火葬場の霊安室とか、私たち葬儀ネットに加盟している葬儀社の霊安室に荼毘に付すまで安置します。

 自宅に帰る人はほとんどいません。家族がいても事情があって自宅に戻したくない遺族もいます。ご近所に知られたくないという人もいます。ほとんどの場合、独り暮らしで親戚や知人もいないから、お葬式はもちろんしない。私が遺言執行を契約している方の全員が葬式仏教には批判的ですね。9割の方が無宗教です。

 葬式をしなければ、費用もかからない?

吉澤  そうですね。火葬にした後は、会との自然葬契約に従って自然葬をするだけです。亡くなってから火葬して遺骨になるまでの費用は平均で50万円から70万円。自然葬契約の予納金を含めても100万円を超す人はいません。

 私たちはボランティアでやっているのではありませんから、人件費と掛かった時間はきちんと説明して、必要な費用はいただいています。葬儀ネットに加盟している葬儀社は同じようにしていますが、きわめて妥当かつ良心的な料金設定だと思います。

 病院に出入りしている業者は荼毘と密葬だけの仕事はやりたがらない。やっても、私たちの倍以上の料金を取るでしょう。これは、病院に出入りするために800万から1,000万の保証金を納めているので、それを回収しなければならないからです。

 

■簡素な葬儀を良心的に  

 葬儀ネットを主宰していますが、今の話のような注文というか、たとえば遺体の運搬と火葬だけという依頼を引き受けてくれるネット加盟の葬儀社はどれぐらいあります?

吉澤  葬儀ネットに加盟しているのは10社で、首都圏では東京に4社、神奈川と千葉にそれぞれ2社、あとは栃木、群馬に1社ずつといったところです。ですから関東でしたら連係を取り合ってだいたい対応できます。現在、埼玉にはありません。関西、九州にはない。これから大阪や名古屋にもネットに加わってくれる葬儀社が欲しいところです。簡素な葬儀を良心的な価格でしてくれる葬儀社をご存知の会員がいらっしゃったら、教えてください。こちらから積極的にアプローチしていきたいと考えています。

 お葬式も引き受ける?

吉澤  簡素で合理的で無宗教の葬儀をしたいという方もいます。そういう時は、お坊さんを呼ばないので、私が葬儀を司会して、母の詩や父の詩、ヘッセの詩集などを読み上げたり、クラシック音楽を流します。お葬式というより、お別れの会に近いですね。

 そのほかにどんな仕事がありますか。

吉澤  自然葬をするために遺骨を粉末化しなければなりませんが、これを1万円で引き受けています。それから仏壇の処分も結構ありますね。自分の死後に仏壇が残るのも困る

し、棄てるわけにもいかない。そんな場合に、車で引き取りに行って、こちらで焼却処分します。これも1万円です。

 ■戒名料の相場

 仏式の葬儀をすると戒名が付きますが、戒名料が高いというのであまり評判がよくない。戒名の相場はあるんですか。

吉澤  全国的な目安は一応あります。「居士」「大姉」が付くと30万円。「院号」が50〜70万。「院殿」だと80万以上です。地域によって寺院の格が高かったり、檀家としてのランクが高いと、さらにプラスされる。一般的に臨済宗は格が高いといわれています。最高で500万円かかったという話を聞きました。戒名にまつわる話はいろいろあって、寺の住職が代替わりして、息子の新住職が檀家の戒名を付け直す。それで100万円取られたというケースもありま す。

 別に戒名は無理して付ける必要はないんじゃないですか。

吉澤  そうです。俗名○○○○でやりますと言えば、お金はかかりません。今ではお寺用の戒名ソフトが6万円で売っていて、それに故人の名前、職業、趣味などを入力すると瞬時に戒名が出てきます。「西光院理玉成道居士」という戒名のいわれを聞いたら、故人が西武百貨店の電気工事関係に勤めていたから「西 光」。理工学部卒業だから「理」。ゴルフが好きだったから「玉」。生前あんまりうまくなかったので、あの世でうまくなるように「成道」と付けた。これなど、ユーモアがききすぎて、どうかと思いますね。 

 

■葬儀のコーディネーター

 どういうきっかけで今の仕事を始めたのですか。

吉澤  私は14年前、「葬送の自由をすすめる会」の発足とともに入会しました。ボランティアの理事になって、会の自然葬のお手伝いをしていたのです。その時、自然葬をされる会員の方と話をしているうち、自然葬をする前の段階でも誰かが手伝わなければならないのではないかと思ったのです。

  しかし、当時は現場でそれをやる理事はいませんでした。それで、いわば自然の流れで私がやりましょうということになりました。理事会でそう申し上げたところ、ご理解を得て、10年前に「木霊と凪」を立ち上げたのです。「木霊(こだま)」は森での自然葬、「凪(なぎ)」は海の自然葬をイメージした命名です。

 葬儀に関係するのはボランティアではできない範囲ですから、必要な経費は契約者に請求させていただく。そうなると理事会に葬儀社が入っていることになって、あらぬ誤解や邪推を招いてもいけないので、理事はやめました。

 事業としてやっていけているのですか。

吉澤  葬儀社としては成り立っていません。「木霊と凪」を始める前から印刷会社と音楽スタジオを経営していましたから、それとの三本立てでやっているの で、葬儀の仕事ができます。自分では普通の葬儀社とは違う存在だと考えていますし、葬儀のコーディネーターであると位置づけていますが、お客さんの99% は会員です。

 今後の仕事のあり方をどう考えていますか。

吉澤  ここ4、5年は仕事がふえてきました。独り暮らしの問題がそれだけ切実になったのだと思います。時代が変わってきて、これからは4人に1人が高齢者 になる。私にとってこれまで葬儀の仕事は片手間でしたが、今後は軸足を簡素で合理的な葬儀に移して、メインの仕事としてやっていきたいと考えています。

 葬儀だけでなくて、高齢者や障害者のための生活支援も視野に入れていきたい。弁護士に頼むと、それなりに費用もかかります。私が任意後見人になって、必要な保証なども私がしてあげられる、そんな受け皿づくりをめざしたいと思います。

自然葬のトップページへ